大前研一

ビジネスブレークスルー(BBT)大学院の学長がいいことを言っている。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20061212/255839/?ST=biz_shinzui&P=1

フレームワークを教えながらそれを壊すのだそうだ。
確かに、フレームワークを使いこなせる人にはフレームワークは要らない。逆説的だが本当の話だ。しかし、BBTに通う人の多くはフレームワークを壊すより先に、使いこなせるようになるのが先だろう。

戦略家として名高い大前さんだが、同じ記事の最終ページを見ると、やはり人の子、弱みがあると見える。彼の弱みは戦略思考が強すぎてマーケティング思考が柔軟ではない点だ。彼が、都知事選で敗れたのは、論理的に間違っていたからではない。投票する人々が彼を胡散臭いと思ったからだ。彼の主張が論理的に正しいかどうかなど、一般大衆には興味がない。彼らに論点をわかりやすく説明し、決断を促すマーケティング力こそが選挙では必要なのだ。例えば、缶ジュースの売上をあげたいときに、この缶ジュースのよさを取り扱い説明書のように書き並べても決して消費者が買わないのと一緒だ。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20061212/255839/?ST=biz_shinzui&P=5

でも、もしかして、実は、大前さんは缶ジュースにも説明書をつけて売るタイプなのかしらん?

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Causeの経営―MBA、MOT、経営を学ぶ人のための競争戦略バイブル

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教育論議

教育改革の目玉が、いじめの連座制、いじめの加害者の隔離、いじめを誘発した先生の退職だそうだ。

こうした話を聞いていると、不思議なことに、鳴り物入りで出来たはずの教育制度改革委員の面々が、現場を見たことがないのではないかと感じさせる。
いじめの加害者の隔離は必ず、新たないじめを誘発する。悪意のある先生ならこの制度を悪用して合法理に子供をいじめることすらできる。見ているだけの子の 中には何が行われているか気付かない子や、善意の子供もいる。いじめる、いじめられるという子供の関係は日常にあり、問題なのは、それが常習的にかつ一人にいじめが集中する点である。
いじめられる子の側にも問題はないか?よくあるのは、嘘をつく子、人のものを取る子など小さいときの躾がなされていない子は周りの親もあのこと付き合うのはよしなさいなどと教育するし、こうした子は自らいじめられることを自身の躾の悪さによって誘発してる場合だってある。
また、この制度の前提は、先生は裁判官のように善人を見分け、公平に処分ができるというものがあるが、果たしてそうであろうか?僕はそうは思わない。子供を隔離するというのは小・中学生にとって見たら、刑罰のようなものだ。その運用を何のトレーニングも積んでいない先生個人に任せられるのならば、今のような複雑な裁判制度はいらない。

現場でおきていることは、一部の躾をしない親、その子供の乱交、先生の権威の失墜と能力の低下、などである。だれも確信を持って信頼できるものがいない。
まず、重要なことは、だれも確信を持って当たれないならば、複数が行うことで客観性を維持するしかない。

先生には手や足に対する平手などによる体罰を認める。親の躾不足を補うにはこれしかない。但し、その行使は、必ず複数の大人の前で行い、恣意的かつ腹いせ的に行わせない。客観的に躾と認められない行為は体罰ではなく暴力として認識されなければ、教師の行きすぎと体罰が峻別できない。学校長・教育委員会などの管理部門は、机の前で仕事をするのではなく、毎日現場を確認し、厳しく教師の指導力・統制力を査定する。いじめを誘発する教師ではなく、すでに教師として統制能力を持たないものには出て行ってもらうべきだ。その上で、教師の報酬をあげれば優秀な人材がどんどん教育の現場に流れるであろう。
一方で、その学校で統制できない子、つまり集団行動のできない子は、まず転校させ、転校させるところのなくなった子は、学校ではなく家庭で義務教育を施すべきだ。こうすることで、一部の問題親に対して、「自分が問題」であることを認識してもらうことが重要だ。
大人の教育は難しい。その一歩として、まず問題があることに気付いてもらうことが重要で、親も教師も、集団としての学校の子に接するものは、その問題性を認識させるプロセスを組み込むべきであろう。

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新風舎のビジネスモデル

新風舎は、出版業界に新たなビジネスモデルを展開する企業だ。

従来の出版業界のビジネスは、いい著者から出版物を預かり、それを大衆に販売することで収益をあげるモデルだ。

しかし、新風舎はちょっと変わっている。この企業の場合、年間に何回か「賞」を設定し、著作物を持つ、素人の作家を募集する。ここまではよくある話だ。異なるのはここからで、応募してきた素人の作品を受賞の有無に関わらず出版勧誘していく点だ。いい作品かどうかは関係ない。文章であれば何でもいい。著作者に美人勧誘員が、壷でも売れそうないきおいで自費出版を勧める。しかも、これが高い。つまり、作品を持つ素人に言葉巧み出版を勧め、自費出版料(つまり作家に金を出させる)を得て出版し、直営の書店に並べ、多くを著者に引き渡す。作家の負担する出版料が高額な割に出版部数は1000部以下と少ないため、在庫負担も少なく、大衆に本を売るよりは確実に収益を上げられるモデルとなっている。

重要なことは、収益を大衆からあげるのではなく、作家から得る方法へ完全に移行している点で、そのための、「賞」「勧誘員」「直営店」などのバリューチェーンを構築していることだ。

頭のいいやり方で、収益をあげる確率も高い。同様に、既存のビジネスのありようをチェックすれば他の業界でもまだまだいろんな可能性があるのではないだろうかと考えさせられる。

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一休.comの苦戦

高級ホテル・旅館の予約サイト、一休.comが苦戦している。

この会社が上場した時に、一体参入障壁はどうするのだろう?と感じていたのだが、やはり、その時の不安通り、楽天JTBなど大手の旅行サイトがこぞって、高級ホテル・旅館の予約事業に参入している。

当初、一休は100万人の高級ホテル・旅館を嗜好する顧客データベースが資産であり、障壁であると考えていたようだが、この100万人はインターネットヘビーユーザーの小金持ちに過ぎない。小金持ちは、より安いサイト、使い勝手のよいサイト、情報の豊富なサイトに簡単に流れてしまう。一方で、本当の富裕層(大金持ち)は、一休なんかを使う必要がない。従って、資産と思われる顧客データベースなど何の価値もない。

では、一休は「どうやっても」淘汰されてしまうのであろうか?

いや、方法はいくつかある。例を2つほど紹介しよう。

一つは、本当に富裕層を顧客にしてしまうことである。一休を通すことで値段は高くてもスペシャルな待遇が受けられれば、富裕層は顧客足りうる。この場合、一休は富裕層のコンシェルジェ機能会社となり、本当に価値のある顧客データベースを持つことになる。さらには、旅行取次ぎ業からの脱皮も期待できる。

もう一つは、会員相互の交流、要するにサークル活動などのグループ化を図ることである。こうすることで、そこに集う会員が魅力となるために移ろうことが少なくなる。

しかし、こうした動きも1st mover's advantageが利くため、最初に動くことが重要であろう。一休がそこに気付くか、それとも他の旅行サイトが気付くか、早い者勝ちである。

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レックス・ホールディングスのMBO

面白い記事を見た。JASDAQ上場6年でMBOをして上場廃止するというレックス・ホールディングスの記事だ。

新興市場は現在低迷している。従って、この機会に株を買い集めることは可能だろうが、上場を果たした創業者がMBOというのは奇異だ。

なぜなら、ここは57万円で初値公開している。長期保有の株主は少なからず大損をしてしまう。また、株主優待を充実させて、個人株主を増やし、牛角ampm成城石井といったリテールを支援してもらっていた企業がその株主をばっさり切り捨てるような行為をとるというのも不思議だ。

レックスの経営者はMBO資金をどうやって得たのだろうか?もし、最初からこれを考え、株価を低迷させるために大量の売りを繰り返していたとすれば、ほとんど詐欺だ。つまり、上場→高値売り出し→保有株の売却→株価低迷→MBOで買戻し→再上場→高値売り出し・・・と無限に高値売却・安値買戻しを自己演出できることになる。これは市場を利用した詐欺に近い。

株主はこれに対してできることはひとつ。「不買運動だけだ。」MBOが成立したら、口コミでレックスグループ企業に対する不買運動を進め、創業者を破綻させるしかない。気の遠い話だが・・・

しかし、新興市場の企業がこぞってこれをやったら、新興市場の信用は台無しだ。JASDAQも今回の件はもっと重大な取り扱いをすべきで、上場後のMBOによる廃止規定を整備すべきであろう。

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戦略立案プロセス

戦略立案プロセスは、簡単に言えば「分析→統合」というプロセスだ。

分析は、3C、SWOT、7人の侍、かきくけこ、動的セグメント、静的セグメントなどの各種フレームワークを使いこなし、事象を幅広く深く切り分けることである。
統合は、3C、SWOTなどを使い、切り分けられた分析を整理統合し、勝ちや価値につながる「発見」をし、精緻化することである。

僕はこれらの複雑なプロセスを1枚の簡単な絵に表現する。

世の多くのコンサルタントは、これらの複雑なプロセスを複雑なまま語ろうとする。確かに、人を導く立場であれば、その方が、視聴者に自分を高く見せることが可能であろう。

一方で、コンサルタントを呼び、戦略立案プロセスを理解したい人は、常日頃からそうしたことに慣れている人ではない。従って、複雑なものを複雑なまま語っても、おもしろいTIPSは得られても、その人の力にはほとんどならない。

そこで、この複雑なプロセスを一枚の絵にする。そのことによって、プロセスは鮮明になり、自分が今どこのプロセスを行っているのかがはっきりする。

要するに、パターン化してあげるわけだ。こうすることで、慣れていない人でも簡単に戦略立案プロセスを自分のものにできるというわけだ。

教育制度改革

教育の場には4つのファクターがある。講師、コンテンツ、受講生、事務局である。小学校であれば、先生、教科書・教材・宿題、小学生、PTA・教育委員会である。小学生のモチベーションはたぶんに他の3者に依存しており、この3つを総合的に考える必要がある。


先生の場合、採用、昇進、退職の各プロセスと評価をだれがどのように行うのかが重要となる。


採用に際して、教育に対する熱意を一番とすべきで、コネや、学校の成績であってはならない。まず、重要なことは教育に対する価値観である。


昇進はどうであろう。この場合には、熱意+技能が重要であろう。小学生の評価というのは難しいので、教育委員会やPTA、先生同士の相互評価が重要となる。ここで、学校の管理職は各先生の授業を見ているだろうか?教育委員会はどうだろう?PTAはどうだろう?授業を見もせずに評価されれば、授業がおざなりになるのは当たり前であろう。


退職は熱意を失ったものの、教育の現場に相応しい言動をしないもの、技能を伴わないものは機械的にやめさせるべきであろう。他の仕事と異なり教育は国の根幹である。ここの従事者は、労働者としての人権より、自己の職務に対して一層の責任感を理解されるべきであろう。そして、そういう厳しい職種であることから、待遇は優遇されるべきであろう。(つづく)