ライブドア考2

以前、ある企業での講演に際して、「『ライブドア』についてどう考えますか?』と
いう質問を受けたことがありました。その時、私は次のように答えました。


堀江社長は頭のいい人だから、ビジネスで失敗はしないと思います。ただ企業としての価値観はお金を儲けることに重点がありすぎるため、そこで大きなトラブルに合うのではないかと思っています。急成長企業の泣き所である優秀な人材の調達・配置において、金銭感覚のみに優れた人ばかりが集まれば、いずれ、それらの人たちの中で大きく信用を損なうような不正を行う『大馬鹿者』も出てくることがあるでしょう。


経営戦略的に言えば、正しい戦略があっても、それを行う人材がそれに見合う資質を伴うことが大事で、だからこそ欧米の優良企業は『企業理念』のような価値観を重視し、それに共鳴できる人材を登用するわけですが、ライブドアでそれができるかは甚だ疑問であり、将来のケーススタディとしてウォッチするつもりです。」


この1両日、風説の流布や偽計取引に堀江社長まで関わっていると報じられています。彼が『徳』があるかどうかは別にして、グレーゾーンはやっても黒はやらないという頭の使い方ができる人だと思っていたので、彼自身が私の言う『大馬鹿者』になるというのは実は意外でした。


こうしたことが起きる要素として、一つには『箍のゆるみ』があろうかと思います。最初はガードが固くても、だんだんグレーゾーンを続けているうちに黒とグレーの境がぼやけてくる、つまり、自分のやることは何でも許されるような錯覚に陥り、判断に甘さが出てくることが考えられます。また、他の面からは、『独裁者に対する情報の歪曲』という要素があるかもしれません。部下や人のいうことに素直に耳を傾けられないトップには段々都合の悪い情報が流れなくなります。部下は叱られることを恐れ、トップがやれといったことは法律よりも優先させてしまうことがあるのは、西武百貨店の事件から教訓として得られています。


いずれにしても、企業が戦略を行う上で、重要なのはそれを行う人であり、人が正しく動くためには、「理念」とか『規範意識』とか、心の部分が重要なのを再認識させられる事件だと思いました。
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