パラダイムシフト 2

2.Promotion(プロモーション-変革の後押し)


次は、従業員がステップに向かい足を進めるための「プロモーション」(推進力)である。トップの示したビジョンに向けてステップを踏みながら、絶えず疑心暗鬼に陥る従業員を振り返らせず、前へ向かわせる圧力を随所に仕掛ける必要がある。最初に言い放しで、後押しがない変革は成功しない。絶えず立ち止まらせず、前に進ませる。それが二番目のステップである。ひとつには、トップの行動がある。コスト削減や顧客志向といっておきながら、トップ自らやその周辺が浪費したり、内部志向に陥っているのをみると、従業員は敏感にトップの変革の姿勢に疑いをもってしまう。ある保険会社で、コスト構造強化のために、トップが冗費の抑制、コストの徹底削減と叫んだことがあった。しかし、その傍らで、秘書部が予算の消化のために無駄な絵画を集めていることがあり、その後他の部も右に倣えで同じように予算消化のために不必要な接待や社内会議を行なうに至って、ほんのわずかな予算削減と本当に必要な経費の翌年送りという事態を招いたことがあった。自分や自分の周辺が、発言に沿った行動をとっていることは変革の大きな推進力になる。


二つ目には、トップと変革の志を同じくする人たち、つまり親衛隊がいることが大事だ。トップだけで変革が進むわけではなく、末端の隅々まで意識・行動を変えさせるためには、トップの意向を汲んだ、いわゆる「親衛隊」を各地、各所の要所に配置し、加えて、トップが彼ら親衛隊に無限の支援を送ることが重要だ。親衛隊がいても、トップが支援を送らなければ、彼らは従業員の中で孤立してしまうかもしれない。彼らが従業員のオピニオンリーダーとなるためには、トップの支援が不可欠だ。


三つ目には、従業員一人一人の成功体験である。自分や自分の周囲が変革に向けて少しずつ変わり、よくなっていけば、変革の歯車はぐるぐると回りはじめる。例えば、5Sなどというツールは変化を体感しやすいツールで、実際、自分の職場環境がきれいになり、在庫がなくなり、キャッシュが充実し、従業員間であいさつが進むなどPositiveな変化が目に見える効果がある。変化が見えにくい場合、有効なのは報酬だ。例えば、利益の拡大、顧客志向の徹底といっても、従業員自身、なかなか変化は体感しづらい。こういう時には、ボーナスなどの形で従業員に成功体験をシェアさせることが重要となる。(続く)