パラダイムシフト 1

パラダイムシフト」とは、思考パターンを変えることで、行動パターンを変えることであり、ここではトップのみならず、従業員の意識改革を行うことで、組織としての行動パターン・行動サイクル・行動の質を変え、”Corporate Regeneration”(企業再生)、つまり、変革を行うことを指す。例えば、売上志向の強い会社を顧客志向の強い会社へ変えたり、「愛い奴(ういやつ)文化」(上司の覚えによって出世が決まる文化)といわれる官僚的で上司へのおもねりの強い企業から、上下の風通しのよい会社へ変えるなどこれまでの価値観や行動を180度変えることをいう。


しかし、パラダイムシフトが重要だとしても、簡単にはできない。人が価値観を変え行動を変えるシーンには数限りないConflictが生じる。パラダイムシフトを起こす変革プロセスでは、そのConflictをいかにコントロールするかということが重要になる。そこには4つのプロセスがある。


1.Ignition(イグニッション-変革の動機付け)


まず、最初に従業員をパラダイムシフトに向かわせるイグニッションという点火のプロセスが必要だ。その第一歩は危機感をもたせ、変革の必要性を理解させることである。危機がそこにあるだけではなく、切迫したものとして「認識」されることが重要だ。ピクニックに行って、崖だとわかっていればシートを広げてお弁当を食べる人はいないが、崖だと気付いていなければ、景色のいい崖の上でお弁当食べ始める人は多いだろう。危機だという状況だけでなく、それをはっきり認識させなければならない。


1994年、コンチネンタル航空は、べスーン氏がCEOに就任した時、三度目の会社更生法適用の危機に直面していた。べスーン氏をはじめとする経営陣は、社内で対話集会を開き、経営危機と、いくつかの空港業務の閉鎖、賃上げ約束の延期を訴え、従業員の協力を仰いだ。


1976年、クロネコヤマトがトラック輸送から宅急便事業に入るとき、実はトラック輸送事業も減少しているものの黒字を続け、毎期配当を出していた。社内でも危機感はなく、小倉社長(当時)が危機を訴え、変革を唱えても役員、ミドルは反応しなかった。その中で、彼が取った策は、地方には仕事がないという理由を出して、各地方にいるドライバーや職員を3ヶ月毎、東京・大阪に社内応援として狩り出すということを行った。これによって、組織の末端(つまり、従業員一人一人)が「そこまで事業が行き詰まっているのか」という危機を感じとり、加えて、社内応援によるストレスから、従業員が積極的に小倉社長の変革プランを受け入れる素地ができた。(続く)