Making of "ローソン研修" 1

6月5日のNHK経済羅針盤という番組でローソン特集があり、その際、僕とグロービスが2年前からやっているローソンの経営幹部研修のシーンが流れました。目がいい人がいるもので、僕が新浪さんと並んで座って、受講生の発表を聞いているシーンを見つけた人もいるようです。ローソンさんは結構この研修をマスコミに取材させており、テレビ東京WBSでもかつて流れました。それというのも、2年間で上は執行役員から中堅層へと広い範囲で研修を行い、ローソンの社内変革の原動力になっている研修なので、イノベーティブに変わろうとしている姿をもっとも表現しやすいからだと思います。


折角の機会ですから、どのようにしてこの研修がスタートし始めたのか、”Making of”の部分を当たり障りのない範囲でご紹介したいと思います。


ローソン研修の打診があったのは2年前(2003年)の春のことだった。2001年に三菱商事から社長に就任した新浪社長から「自社ケースを使った研修」というお題が当時のローソン研修担当の川田さん(仮称)におりグロービスに照会がきた。すったもんだする間にいったん受けたはずのグロービス担当が変更になり、具体的な話が進まなくなった。新しく担当になったグロービスの同藤さん(仮称)から僕に自社ケース作成の依頼が来たのは5月になってからだった。「江口さん、2ヶ月後ぐらいの実施で自社ケース作って講師やってくれますか?」


その前から薄々噂は聞いていたが、自社ケースを作ってクラスを開始するのが2ヵ月後というのはほとんど無理な話だった。もちろん、文章のうまい人がいれば、ケーススタディ用の自社ケースを文章化すること自体は簡単な話だが、問題はクラスに耐えうる論点を見出しうるかであった。通常1つのケースで3時間〜4時間のクラスを行う。その間、大きな論点(議論できる争点)が3つほどなければクラスは成り立たない。この相談の時点で、当時業績好調なローソンに何が論点としてあるのか、さっぱりわからなかった。


もうやめてしまったが、このときのローソンの研修担当の方も「ケーススタディ」とは何かというイメージのないまま社長のお題を受けており、結局、直接の依頼主が何をどうしたらいいのかわからない、そこから話を聞いているグロービスでも当然わからない、ましてや、僕は五里霧中。さてどうしたもんかということで、まず社長の側近にヒアリングをさせてもらうこととなった。


「過去のローソンに決別し、新社長が新しい改革路線をひた走っている。そして、改革1年でふと後ろを振り向くとだれもついてきていない。社長がやりたいのは、自分の戦略を理解し、さらに自立的な判断ができるミドルを育てることだ。」


さすがに側近、話の通りが早い。しかし、それでも社長のその目的にもっとも効果的な題材がなぜ自社ケースなのかはわからなかった。(続く)
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