フィリップスの変革

前回のフィリップスのケースコラム「ライブドア考」は実はリンクしていたのだが、お気づきになっただろうか?


フィリップスの大事なところは、定規で引いたきれいな線の上を多くの従業員歩かせようとする無理を感じて欲しかったのである。


あの程度の短いケースではフィリップスの戦略が正しいかどうかわからないが、ある程度大企業に勤めてたことがある人であれば、今まで主流派であった国別組織の幹部が、戦略が変わったからといってそれまで傍流であった事業部別組織の風下には立てないということはすぐ感じられたのではないだろうか?


今までのエリートは全て国別組織にいる。そしてマトリックス組織の元で2人のボスに仕えていたマネージャーはこれまで国別組織を中心に人脈を考えていた。戦略が変わったからといって、急にそれらの人が既得権を手放したり、これまでの人脈を無にするような行動を取ることは少ない。


戦略が正しいとしても、引かれた線が細くまっすぐすぎてはだれも歩めないのである。


これまでここのマトリックス組織は、会社としての方針ではなく、2人のボスの間の交渉力の差によって意思決定が行われてきた。まず取り組むべきは、これを会社としての方針に基づく意思決定の行われるマトリックス組織に変えるべきで、会社としての方針による経営が浸透した段階であれば、事業部別組織への権力を移行するという荒療治をしなくても、向かうべき方向へ人は動き始めるはずである。


従って、このケースでもっとも優先的になされるべきは、マトリックス組織のコンフリクトを自分達で解消しようとする経営陣の強い意志を行動によって示すことであろう。蓋し、隗よりはじめなければ、下の従業員のマインド変化なんか起ころうはずもない。