ライブドア考

私は、堀江さんがまだ長髪でマザーズに上場したばかりの頃、彼の上場に際しての最初の情報開示のプレゼンにアナリストとして参加したことがある。その時の同僚の評は、「うさんくさい」だった。彼が問題にしたのはプレゼンの内容ではなく、聴衆や質問者、つまり、人に対する態度であった。


それから、10年近くが経ち、同僚の予想に反してライブドアは非常に大きくなった。しかし、堀江さんに対する評はいまだに二分しているようである。彼の頭のよさや実績はだれもが認めるところながら、彼への評価は二分するというのは不思議な現象である。フジもニッポン放送も一緒にやりたがらないのは、不思議な話でもあり、納得できる話でもある。


蓋し、戦略を立案するには「頭」がいる。しかし、実行するには「体」と「心」がいる。


頭のいい人は得てして「心」を忘れてしまいがちだ。お金があれば人は言うことを聞く。これは真実である。しかし、言うことを聞くのは表面での話であり、内面は別である。いわゆる「面従腹背」というやつである。そして、これは組織にとって一番怖い。なぜならば、表面的にはいい話しか流れないのに、影では経営の意図と異なることが行われる可能性があるからだ。たとえ、調子のいい企業でも面従腹背が横行すればいずれ問題が百出する。三菱自動車がいい例だろう。データやシステム上にブラックボックスの多いIT関連企業であれば尚のこと、面従腹背の輩が何をどうしているのか見つけるのが難しい。


「実るほど頭を垂れる稲穂かな」


堀江さんは頭のいい優秀な人であり、彼の人となりがもう少し成熟してくると、もっといろんな人が共感を持ち、手を差し伸べてくれるだろうにと、感じながらニュースを見ている。


戦略は定規で線を引くようにまっすぐきれいに引ける。しかし、まっすぐの線を素直にまっすぐ歩く人は少ない。人の歩みを進めるのはリーダーシップであり、お金はリーダーのパワーの源泉のひとつでしかない。